樋口　一葉 作品買取

1872年（明治5年）5月2日ー1896年（明治29年）11月23日　東京都出身
小説家

女性として日本で初めて職業作家を志し、古典的文体を用い、貧しい庶民生活や封建的な社会に苦しんでいる古い時代の女性の悲哀を巧みな構成と細やかな心理描写で描いた作品は高く評価されています。

樋口一葉は、1872年（明治5年）5月2日（旧暦3月25日）に、現在の東京都千代田区で東京府の下級役人をしていた父の家庭に生まれました。
幼児期から利発で言葉が出るのも早く物覚えも良く、幼少時代は手毬や羽根突きなどの同年代の子供の遊びに興味が無く、読書を好み草双紙を読みふけっていました。

この頃の家庭は、父が役人の仕事の他にも不動産や金融業で生活の安定を図っていた為、かなり豊かな生活を送っていました。
学校でも非常に優秀な成績を修めていて、1883年の11歳には小学高等科第4級を首席の成績で卒業しますが、一葉の母が女に学問は不要だという考えの人物だった為、進学はせずにそれ以降は学校教育は受けませんでした。

しかし、向学心がやまない一葉に学問を続けさせてあげたいという父の思いから、知人の下で和歌を習わせ、1886年の14歳の時に歌人の中島歌子の歌塾「萩の舎」に入門し、そこで和歌と古典を学びました。才能と人柄が認められ、後に先生の助手まで務めるようになりました。

そんな中、1888年に兄を肺結核で亡くし、翌年には父が事業に失敗して負債を残したまま亡くなり、一葉は17歳にして樋口家を背負うことになりました。
貧しい生活を強いられた一葉は、収入を得る道を探すことになり、様々な仕事をしますがそれでも生活は苦しく借金を繰り返す生活を送ります。

そんな時、「萩の舎」で同門だった姉弟子の田辺花圃が小説『藪の鶯』を出版し多額の原稿料を得たことを知り、小説家になることを決意します。
19歳の時に知人の紹介で、東京朝日新聞専属作家の半井桃水を訪ね、小説の指導を受け始め徐々に雑誌や新聞に小説を発表できるようになりますが、少ない原稿料だけでは生活は苦しく借金や質屋通いしなければなりませんでした。

1893年には生活苦打開のために、吉原遊郭近くの下谷龍泉寺町に荒物と駄菓子を売る雑貨店を開きました。
しかし、近所に同業者が開業したため商売が苦しくなり翌年には店を閉めますが、この時の経験が一葉の人間的成長を促し、人間観察の目を育てて、後の代表作となる『たけくらべ』の題材となるなど多くの文学的素材を与えた点で重要な意味を持ちました。

生活は依然として苦しいながらも、1894年12月に『文学界』に『大つごもり』を発表すると、その後も『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などを発表します。
『大つごもり』から『裏紫』にかけて、一気に傑作を書き綴ったこの短い期間を、一葉研究家の和田芳恵は「奇跡の14か月」と呼びました。

一葉の作品は、森鴎外や幸田露伴などの辛辣で知られた作家たちからも高く評価されるなど、徐々にその名声は高まっていきましたが、一葉の体は執筆の過労や長年の生活の困窮などから体調が急速に衰え、また肺結核が進行しており、1896年11月23日に24歳の若さで生涯を閉じました。

近代以降では最初の職業女流作家として、短い活動期間ながらも多くの日本の近代文学史に残る名作を残し、2004年には五千円紙幣に肖像が採用されるなど現在でも評価が高く、早逝が惜しまれる作家です。

代表作に『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』など

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