大岡　昇平 作品買取

1909年（明治42年）3月6日ー1988年（昭和63年）12月25日　東京都出身
小説家・評論家・仏文学翻訳家・研究家

自らの出兵体験を基に、戦争という極限状態の環境の人間の心理を透徹したまなざしで描き出した作品は、人間の根源的な問いを内包する優れた文学として読み継がれている、戦後を代表する作家です。

大岡昇平は、1909年に東京市牛込区（現：新宿区）新小川町に生まれました。
幼少期より読書が好きで、8歳頃から『立川文庫』や『日本少年』などを愛読します。

1919年には従兄の勧めがきっかけとなり、児童雑誌『赤い鳥』に『赤リボン』を投稿し入選をすると、その後も熱心に投稿を続けるようになります。『赤リボン』は北原白秋から「音楽的で面白い」との評価を受けています。

青山学院中学部に入学後は、芥川龍之介やゲーテの文学や西田幾多郎の哲学書やマルクスの著書を読むようになります。

1925年に成城第二中学校4年に編入すると、後に美術評論家となる富永次郎と友人となります。
富永の兄の太郎は詩人をしており、その年に病気で若くして亡くなりましたが、没後に出版された遺作の影響から昇平は仏文学に関心を抱くようになります。

1927年には、アテネ・フランセの夜学でフランス語を学び、翌年には高校の先生を通じて小林秀雄を紹介され、フランス語の個人授業を受けます。その縁から、中原中也や河上徹太郎らと交流を始めました。

1929年に京都帝国大学文学部文学科に入学すると、河上徹太郎や中原中也らと同人雑誌『白痴群』を創刊しました。
また、大学在学中にフランスの小説家スタンダールに傾倒し、心理分析を極めた知的で簡潔な文体を学び、卒業後も研究を続け、後に翻訳も手掛けます。

大学卒業後は、帝国酸素や川崎重工業などに勤務しながら翻訳書を刊行していましたが、1944年に35歳で招集され軍隊に入隊し、フィリピンのミンドロ島に赴きました。

1945年には、マラリアにかかり昏睡状態に陥り米軍の捕虜となり、レイテ島タクロバンの病院に収容されます。そこで終戦を迎えると、12月に帰国します。
1946年には、この経験を基に『俘虜記』や『野火』の原型となる『狂人日記』の執筆をしています。

1947年にフランス映画輸出組合日本事務所の文芸部長に就任し、字幕翻訳などを手掛けながら、1949年3月に『俘虜記』が横山利一賞を受賞します。
『俘虜記』は、戦争の極限状態の行動過程を精密な心理分析によって描き、人間存在を凝視したこの作品で戦後派作家の地位を確立しました。

その後も、『野火』や『レイテ戦記』など戦争文学の他にも、恋愛小説『武蔵野夫人』や推理小説風の『事件』など幅広いジャンルの作品を発表し続け、様々な文学賞を受賞しました。

旺盛な好奇心からゴルフや囲碁など幅広い趣味を嗜み、マンガやロック音楽、映画など様々な分野に強い関心を抱き続け、手掛けた作品のジャンルは多様で、その好奇心は晩年まで変わりませんでした。

1988年12月25日　脳梗塞のため死去　79歳没

代表作に『俘虜記』『野火』『レイテ戦記』など

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